《目 次》
1.快適人生とは、人間まるごと快適
2.健康の条件
3.老いや死は誰にも来る、長い人生をよりよく生きるために
4.愛が遺伝子のスイッチON
5.あるがままの命をいかす
6.私のいのちではない、生かされているいのち
7.「老いの才覚」 曾野綾子さん
人間まるごと万歳!
1.快適人生とは、人間まるごと快適
快適人生って何だろうと考えたとき、まず思いつくのは健康とか若さ、ステキな家族や友だち、満足できる仕事、家やお金などでしょう。ホリスティック(Holistic)という言葉があります。ホリスティックとは、全体、関連、つながり、バランスといった意味を包含した言葉で、人間の生を、「いのちの営み」として、ありのまま全体を見つめ、限界や欠如も含めて、まるごと尊重する姿勢がホリスティックです。健康や癒しは、身体だけでなく目に見えない精神・
霊性も含めた、人間の全体性と深い関係があります。
したがって、ホリスティックな健康とは、病気でない状態が健康であるという否定的な見方や、血液や細胞検査の結果が正常値内であれば健康であるという消極的な定義ではありません。
ホリスティックな健康とは、精神と身体、環境がほどよく調和し、与えられた条件において、最良のクオリティ・オブ・ライフを得ている状態を健康と考える、より積極的な状態をいいます。
ホリスティック医療とは、人間を、体・心・気・霊性等の有機的統合体ととらえ、社会・自然・宇宙との調和にもとづく包括的、全体的な健康観に立脚したものであるといいます。(参考:日本ホリスティック医学協会解説)
ところで私ごとですが、1997年4月、たった一人で始めた事業が、人生賭けて仕事をする良い仲間と、ステキなお客さまに恵まれたお陰さまで、創業8年目の2005年には東京都内を中心に20店舗、社員数は400人を超え、売上も100億円程の事業規模まで成長しました。マスコミからも、「東京で一番のリフォーム会社」といわれるようになりました。そうなると、もっと勉強するから、もっと本気で経営できて、もっと多くの新入社員や取引先、お客様とも出会うことができました。
そうして本気でやっていた2008年12月6日、私の心の支えであり私の一番の宝物だったかみさんが、急性心不全で突然私の前から姿を消してしまいました。
それから1年半ちょっと経った2010(平成22)年7月31日、会社経営も安定成長軌道にのっていたので、私は後進に経営を託して辞任しました。
「資本主義の落とし子」と自負し、会社一筋だった男が大好きな会社を辞め、「64才になった私は、これから何をするのか?」、私に課せられた「人間としての使命は何なのか?」 あちこち訪ね、多くの人に会い、多くの本を読んで懸命に考えました。
そんな折、かねて済生会宇都宮病院で検査していたものが、会社を辞めた1ヵ月後にがんと判明しました。
がんの摘出手術で9月末から半月ほど入院しました。この入院期間を通して、私の主治医や他のお医者さん、看護師さんも一生懸命手当をしてくれ、私の回復を願ってることを感じました。
病院は手術で私のがんを取ってくれましたが、体だけ手当てしているのでなく、私の不安な心まで癒してくれるのを実感しました。この入院期間中に整理したのが右上の概念図、人間まるごと快適=ホリスティックでした。
会社を辞め、これから先、私に課せられた使命に思いをめぐらせていたちょうどいいときに、ちょうどいい程度の病気になって、ちょうどいい病院に入院したことは、私にとって貴重な体験であり、大変ありがたいことでした。これまでの、「自分ひとりで生きている」 「私のいのち」と思っていたことが、「生かされているいのち」であり、大切な人生の目的がおぼろげながら見えてきました。
できわくことは全て、「わがはからいにあらず」を実感しました。貴重な体験に心から感謝です。
後日談2012(平成24)年 秋)
「資本主義の落し子」を自負していた私に、「仏とも法とも思わなかった」私に、かみさんは命賭けて仏法の大切さ、ご縁を届けてくれました。そのお陰さまで、親鸞聖人に・南無阿弥陀仏に・浄土真宗に 出遇うことができました。南無阿弥陀仏に出遇えて間もなく4年になりますが、その間、聴聞を重ね、本もいっぱい読んで、体系的に仏教を学びたくなり浄土真宗本願寺派の中央仏教学院にも入学しました。
そんなこともあって、私自身が深く親鸞聖人の・南無阿弥陀仏のおこころを学びながら、私の身の丈に合ったやり方で、まわりの方にも南無阿弥陀仏のご縁をお届けしていました。
何どもお話をさせていただく皆さまの中に、数年前ご主人を亡くされた方がおりました。その方と話しているうちに、私の亡くなったかみさんにとっても似ているもの、心の安らぎを感じるようになり、年が明けたら結婚することになりました。しかし、今更教会で挙式というのも何となく恥ずかしく、娘家族だけに参列してもらって、ハワイ山奥での伝統的な結婚式にしました。
親鸞聖人はそのご著書「教行信証」で、お念仏の人に備わる「現生十種の利益」を教えて下さいました。亡くなったかみさんの、その実家である石川県の義母・義姉の、仏縁を届けていただく皆さまの、温かいおこころに日々感謝です。 釋靜文 釋温慎 釋正真
人間まるごと万歳!
2.健康の条件
健康に必要な条件は次の三つです。
1.最初は食事です。
日本では飽食(ほうしょく)の時代といわれ、食べられる食品を年間2千万トンも廃棄しているといいます。昔から「腹八分目で医者いらず、腹六分目で老い知らず」といいますが、食べ過ぎて病気になる人が多いといわれます。体にいいものを適当な分量で、規則正しく食べることが必要です。
2.二つ目は体力と年齢に応じた適度な運動です。
真剣に仏法を追求したお坊さんが長命なのは、毎日の読経(どきょう)で自然に腹式呼吸をして、諸堂を参拝することで自然にウォーキングをしているからともいわれます。
3.三つ目は心の持ち方です。
感謝の心、敬いの心、寛容な心といった、明るい心で生活している人は良いホルモンが分泌して健康増進になります。
一方、愚痴の心、怒りの心、嫉妬(しっと)の心など、暗い心は体内から毒素がでて健康を害し、命を縮めることになります。
会社一途で働いてきた男は、定年退職してしばらくすると家庭内で居場所もなくなり、孤独感から寂しくなる人が多くいます。できるだけ家族に感謝の言葉をかけること、友達を持つことが大切で、心の充実感は感謝するところにあります。 周りを見回すと感謝することがいっぱいあります。 奥さんが作ってくれた料理でも、お茶でも、歩けることでも、話して意思を伝えられることでも、それが当然で慣れっこになっていませんか? ちょっとしたことでも、感謝の言葉を声に出していう練習から始めてみましょう。
やり続けると、気づいたら人間まるごと万歳!の快適人生になっていますよ。
人間まるごと万歳!
3.老いや死は誰にも来る、長い人間をよりよく生きるために
快適人生って何だろうと考えたとき、オギャと生まれたばかりの赤ちゃんでも、元気いっぱい飛び跳ねる子供でも、人間は誰しも全員「死のキャリア」です。がん細胞があってもエイズのキャリアでも、発症しない人がいます。しかし、人間は例外なく、誰でも死の発症率は100%です。それなのに、私たちは必要以上に病気や死を恐れタブー視してきました。体の健康や若さを保つ努力も必要でしょうし、適度な自慢話もほほえましいものがありますが、過去を追っても帰ってきませんし、将来を憂いてもまだ至っていません。
人生の円熟期に入ったら、生まれてこのかた身につけた知識や経験を生かしながら、年齢や状況に応じて自分の今の現実を正しく見つめ、努力して生きるところに、自分なりに納得できる人生が開けてくるのでしょう。
人生の円熟期にさしかかったら、老いに向かう「向老期」であることを認識し、何歳になっても「今」を懸命に生きる努力をすれば、老いを超え、病を超えて、楽しく生きていく道が広がります。
素晴らしい人生、どう生きるのかということに加え、なぜ生きるのかという人生の目的も一緒に学びたいものです。
人間まるごと万歳!
e-mail. hana_akari@isao130.sakura.ne.jp
koshikata yukusue
長谷部 勲(はせべ いさお)
第二次世界大戦終戦の翌年1946年、団塊世代で栃木県の生まれ。
戦後の混乱期、農業兼国鉄マンの家庭に育ち高卒で就職したが、1年で退社。大学を出て就職、後に会社を興して社長職。2010年社長を辞して仏教徒(浄土真宗)になる。お陰さまの安穏な日暮し。